動物実験Q&A

1. 実験動物の年間使用数は?
  日本では動物実験施設が届出も登録もされていないため、実数がわかりませんが、2004年に(社)日本実験動物学会と(社)日本実験動物協会が行ったアンケートからは1000万匹を遥かに超えると推測され、これはEUでもトップクラスのイギリスの190万匹(2005年)と比べても断トツに多い数字となっており、2005年のEU全体の使用数1200万匹にほぼ匹敵する数です。EUや諸外国では実験種別毎の統計もありますが、日本では何にどれくらい使われたのかというデータは全くありません。

 

2. 動物実験の現在の規制状況は?
  日本では環境省所管の「動物の愛護及び管理に関する法律」で、動物実験の国際原則3R(削減、代替、苦痛軽減)が理念として反映されているにすぎず、諸外国で何十年も前から確立されている、施設や実験計画の許可制、実験者の免許制等の実質的な規制は何一つなく、ほとんど野放しの状態です(誰が、どこで、どんな実験を行うことも法的に制限されていない)。関係省庁の基準や指針により、動物実験を行う各機関(大学や研究所、企業等)は動物実験委員会を設けて動物実験計画を審査することが求められていますが、基本的に身内や同業者による審査であるため、形式的になりがちで、一般市民の感覚からかけ離れているという批判があります。また、情報が公開されないため、外部監視による抑止力が働かず、自主管理に委ねられているため、罰則も強制力もありません。
 参照:日本における動物実験の自主管理の仕組み

 

3.動物実験関係者が始めた第三者評価制度とは?
  2004年の日本学術会議の提言を受けて、大学、製薬企業、実験動物生産業者それぞれが各々の協議会や財団、協会が主催して始めている制度です。内容は各施設の「自己点検・評価」の確認が主体で、極めて形式的なものです。
(例:http://www.nirs.go.jp/research/group/animal/committee.html )
 大学で2009年、製薬企業で2008年に開始以来、少なくとも500以上あると考えられる(文科省や学会の調査より推定)動物実験施設の中で、評価を受けた機関は大学、製薬企業で2011年までにそれぞれたった27機関、14施設にすぎません(第21回動物愛護管理のあり方検討小委員会鍵山直子氏説明資料より:http://www.env.go.jp/council/14animal/y143-21.html
  そもそも「第三者」というのは通常全く利害関係のない人や組織を指すのではないでしょうか?現状の評価主体は各々の業界を代表する団体なので、利害関係がないどころか、「持ちつ持たれつ」の関係です。このような誤魔化しの制度は法的な管理を逃れる言い訳にはなりません。

 

4. 動物実験は動物愛護管理法の範疇外?
  「動物実験」は動物愛護管理法の範疇外だとする主張が一部の関係者からなされることがありますが、そんなことはありません。動物愛護管理法は第一条の(目的)で、「動物の虐待の防止、動物の適正な取扱いその他動物の愛護に関する事項を定め」ることとなっており、「動物実験」は「実験動物の取扱い」そのものですから、当然この法律の範疇に入ります。多くの諸外国の法律においても、動物実験の規定は動物保護法の中で主要な位置を占めています(関連項目8)。

 

5.施設の登録制とは?
  施設に行政への登録を義務付ける制度です。動物取扱業は99年の改正で届出制、2005年の改正で登録制となりましたが、実験動物関係や畜産関係は除外されています。届出制は行政が実態把握のために行う制度ですが、登録制はそれに加えて、登録時の基準を設けたり、登録取り消しや業務停止命令を行うことができます。
  欧州では施設だけではなく、実験者や実験計画に対して、更に厳しい許認可制やライセンス制をとっています。日本には自主管理制度しかなく、動物実験施設や実験動物取扱業者は実質的に野放しの状態です。施設の登録制は、実態把握と、最低限の行政指導のために必要です。

 

6.3Rとは?
  3Rsは1959年にイギリスの研究者RussellとBurchにより提唱された考え方で、動物実験の基本原則として広く国際的に認知されています。

Replacement(代替):細胞や組織を使用したin vitro(試験管内実験)への代替、無脊椎動物等の意識・感覚が低位の動物種の利用、コンピュータシュミレーション等の動物を全く使用しない方法の利用
Reduction(削減):科学的に必要な最少の動物数を使用、同程度の情報をより少ない動物を用いて得ることができる方法の選択
Refinement(改善):痛み・苦痛・ストレス等の軽減、安楽死措置、飼育環境改善など

各国の法律や国際基準・指針等に反映されており、日本でも2005年の動物愛護法改正で取り入れられました(それまでは「苦痛の軽減」のみ)。3Rsは実験動物の福祉、動物実験の適正化のために欠かせない概念であり、この概念を理念だけではなく、実質的に担保、推進するための仕組みが必要です。

 

7.動物実験/実験動物の種類は?
  動物実験には大学や研究所が行う医学、薬学、獣医学等の研究のために行うもの、製薬企業等が行う医薬品開発試験等があります。製薬企業等が行う、薬事法や化学物質審査法等の法律で定められている動物実験(毒性試験等)には以下のような種類があります。
http://www.ka-anken.co.jp/trust/non_clinical_trial/
 また様々な種類の疾患モデル動物や遺伝子改変動物が開発・販売されています。
http://animal.nibio.go.jp/j_disease_mice.html
http://www.clea-japan.com/animalpege/animal01_04.html
http://tprc.nibio.go.jp/research/disease.html

 

8.動物実験・実験動物行政の仕組みは?
  環境省は以下のパンフレットの中で、「実験動物の飼養保管等の適正化」の措置は環境省が動物愛護管理法に基づき実施し、「動物実験の適正化」の措置は動物実験に関係する省庁(文科、厚労、農水等)が各種法令などに基づき実施する、としています。
http://www.env.go.jp/council/14animal/y143-21/ref01.pdf
しかしこれには問題点があります。
 第一に文科、厚労、農水等の省庁が所管する法令は、薬や化学物質の安全性確認等を目的とした法令であり、動物愛護について定められたものはほとんどないということです。
 第二に「動物実験の適正化」の措置と「実験動物の飼養保管等の適正化」の措置は厳密に切り分けることができないということです。
  現行の法律は、動物実験についての理念(3R)をうたっているに過ぎないため、結果としてこのような仕組みになっていますが、本来は「動物実験の適正化」についてもこの動物愛護管理法で規定するのが法律の目的に照らして当然なあり方だと考えられます。また他の省庁に協力依頼をするにしても、根拠になる法律(条文)がなければ、動物愛護(保護)の観点からの動物実験の適正化はできません。何よりも実験動物施設がどこにあるのかを行政が全く把握していない現状では、指導のしようがありません。まずは動物愛護管理法の中で実験動物施設を登録制とし、実態を把握することが何よりも先決です。