2012動物愛護法改正案

―動物実験の実態把握と3Rの推進を!―

 

 日本では年間1000万匹以上(関連学会のアンケート調査より推定)の動物が実験に使われていますが、その実態は一般市民の目からは隔絶されています。現在、日本では動物実験に対して如何なる法的規制もないために、いつ、誰が、どこで、どんな実験をすることも自由です。そして、施設の所在や動物の種類・使用数等、基本的な事柄さえも把握されていません。こんな国は先進国中、日本だけです。

  日本も加盟しているOIEでは2010年に国際標準として実験動物福祉綱領を制定しました(内容は3Rsの実践、監視の枠組み、動物実験従事者の訓練、獣医学的ケアの整備、実験動物の供給、実験施設と環境条件、飼育条件等)。これは日本を含むすべての加盟各国に適用されますが、日本の現状の法令はこの要件を全く満たしていません。このような状況は遅かれ早かれ、国際摩擦の原因になることは明らかです。

  まずは動物実験の実態を把握するため、また日本の法令を国際要件に少しでも近づけるため、以下の事項を動物愛護法及び関係法令へ盛り込むことを提案します。

 

1.すべての実験動物施設を登録制とする。 
・すべての実験動物飼養施設(動物実験施設及び実験動物生産・販売・輸入業者含む)を登録制とする。
・国は実験施設の所在や数、実験動物の種類や用途、数等の情報を把握するとともに、基本的な情報を国民に開示し、実験動物の飼養管理及び動物実験の適正化に係る管理指導を行う義務を負う。
 兵庫県は既に平成5年から、条例で実験動物施設の届出制を実施(第25-26条)している。

 

2.動物実験施設への獣医師の設置及び動物実験委員会への市民参加
・実験動物の福祉及び3R推進の観点から、動物実験施設への獣医師設置を義務付ける。本件についてはOIEの綱領その他各種の国際基準にも定められ、また日本では日本実験動物医学会(実験動物獣医師の学会)も提案している。http://plaza.umin.ac.jp/JALAM/Ikensho_Jalam2011.htm
・動物実験計画が専門家による偏った審査になることを避け、また動物実験と一般社会の接点を作り、社会の監視の目が届くように、動物実験委員会への市民参加の道を開く。本件もOIEの綱領その他各種の国際基準に定められ、アメリカ(機関内委員会)では獣医師1名、民間人1名を含むドイツ(州政府の委員会)では1/3が動物保護団体の推薦者を含む

 

3.3R原則の強化 
・3R(削減、苦痛の軽減、代替)の表現をOIEやEU等の国際スタンダードな表現に倣い、強化する。
・現在「配慮するものとする」とされている2R(削減、代替)を義務化(しなければならない)とする。
・3Rは必須条件であることから「科学上の利用の目的を達することができる範囲において」「その利用に必要な限度において」の前提条件は削除する。
 3Rの強化については日本動物実験代替法学会も提案している。
http://www.asas.or.jp/jsaae/info/info_20110922.html

 

4.実験動物の福祉や動物実験の3Rを推進するための窓口を設ける。 
・国は実験動物の福祉や動物実験の3R(削減、苦痛の軽減、代替)に関する情報を収集し、動物実験の適正化に係る管理指導に反映させるための窓口を設ける。
・窓口は収集した情報の提供、公開に努めるとともに、広く国民からの意見も募集し、国の施策へ反映させる。
 例:動物福祉法を所管するアメリカ農務省のAnimal Welfare Information Center(AWIC)
イギリスの国立3R研究センター The National Centre for the Replacement, Refinement and Reduction of Animals in Research (NC3Rs)

 

5.法律が「動物実験」を含むことを明確にし、「雑則」から外す。 
  法律が「実験動物の飼養管理」だけではなく、「動物実験の適正化」についても所管することを明確にし、動物実験について定めた第41条を「雑則」の項目から独立させる。本法の目的(動物の虐待の防止、動物の適正な取扱いその他動物の愛護に関する事項)に照らして「動物実験の適正化」を含むことは必須であり、またそうでなければOIE等の要件を満たすことはできない(動物実験Q&Aの4と8を参照)。