2012動物愛護法改正結果

 動物愛護法改正案は、8月28日に衆議院の環境委員会と本会議、及び参議院の環境委員会、8月29日に参議院の本会議で可決され、国会最終盤で成立しましたが、実験動物/動物実験については一切改正なしという結果に終わりました。

 実験動物の問題は1999年の法改正以前より、長く市民団体が求めてきた重要事項であり、行政や市民の目が全く入らない現状の自主規制、自主管理体制では市民は永久に納得しないでしょう。

 また、動物愛護法が対象とする4種類の動物(家庭動物、展示動物、実験動物、産業動物)のうち、半分の動物(実験動物、産業動物)について、最初の改正以来13年間(法律制定以来39年間)実質的な改正が全くなしに改正され続けていることに対しても強く警鐘を鳴らしたいと思います。

 今回、実験動物に関しては実質3度目の見送りとなりましたが、他国の法律や国際的な基準・指針との差は広がるばかりで、附帯決議にあるような、国際的な規制の動向を調査すべき段階はとっくに過ぎています。

 私たちは次回の法律見直し時期(5年後)を待つことなく、日本における動物実験の実質的な法的管理の実現を目指してあらゆる方法を使って努力していきたいと思います。

 

●委員会と本会議の様子(動画)は以下でご覧いただくことができます。

衆議院環境委員会及び本会議

参議院環境委員会及び本会議(平成24年8月28日、29日を選択。本会議は51分30秒前後から)

 

●質疑項目と附帯決議、議事録は以下でご覧いただくことができます。

参議院環境委員会質疑項目

参議院環境委員会附帯決議

※衆議院及び参議院の環境委員会の議事録については、国会会議録検索システム→簡単検索→平成24年8月28日衆議院(または参議院)環境委員会を選択してご覧ください。

 

●実験動物に関して、法律本文では一切改正がありませんでしたが、委員会の附帯決議では衆参とも以下のような決議文が盛り込まれました。

 

「実験動物の取扱いに係る法制度の検討に際しては、関係者による自主管理の取組及び関係府省による実態把握の取組を踏まえつつ、国際的な規制の動向や科学的知見に関する情報の収集に努めること。また、関係府省との連携を図りつつ、3R(代替法の選択、使用数の削減、苦痛の軽減)の実効性の強化等により、実験動物の福祉の実現に努めること。」

 

●衆議院環境委員会での実験動物に関する委員発言は以下の通りです。(衆議院議事録より)

○田島一成委員(民主)
  また、実験動物の取り扱いについては、実験動物施設の届け出制を既に実施をしている兵庫県の条例並みに導入できないか、配慮事項となっている代替法の活用と使用数削減について義務化できないか、党内ででも検討を重ねてまいりましたが、実験関係者等から施設の情報開示による損害や生命科学研究発展への障害が生じるといった懸念も示され、今回は、残念ながら改正事項からは見送ることとなりました。
  しかし、こうした実験動物の適正な取り扱いに向けた法制度のあり方の検討については、研究機関や事業者等による自主的な改善努力を図る一方で、実験動物の逸走による危害発生防止など災害時対策の必要性もあり、関係府省との連携を図りつつ、不断の検討を行うべきと考えます。

○岡本英子委員(生活)
  ところで、今回の法改正に際し最重点課題の一つは、これまで手つかずであった実験動物の適切な取り扱いに関する規定の充実強化でした。当初は、この実験動物を取り扱う施設を届け出制にし、スリーRも義務化をするという改正案をつくろうとの動きもありましたが、結果としては盛り込まれませんでした。
  届け出制を導入するだけで実験に大きな支障があるのでしょうか。法制度が整わずに世界の潮流に取り残されることこそ、まさにライフイノベーションの国家戦略を阻害するものだと私は思います。将来に禍根を残すことのないような取り組みが今後は必要であると思います。

○江田康之委員(公明)
  実験動物の取り扱いについては、前回改正の後に環境省が策定した基準を踏まえ、文部科学省、厚生労働省、農林水産省がそれぞれの基本指針を、日本学術会議がガイドラインを策定し、各事業者内での規定の策定、情報公開や外部検証等による自主管理の取り組みが進められているところであります。
  実験動物の適正な飼養のためには、まず、これらの取り組みを徹底させてその状況を検証することが重要であり、関係各省の連携により、実態把握、スリーRの実効性の確保を一層推進していくべきものであります。
  
●参議院環境委員会では、4党協議に入らなかった少数野党の委員から法案に対する質疑がありました。このうち、実験動物に関しては以下の質疑がありました。

 

 水野賢一委員(みんな)
•動物実験によって犠牲となっている動物の数
•動物実験に係る情報開示を義務付ける必要性

 

 市田忠義委員(共産)
•動物実験における3R原則を理念だけではなく、担保・推進するための仕組みについての検討状況

 

 水野委員の質問に対しては、田島一成委員(民主党動物愛護対策WT座長)が概略以下のように答弁していました。

 今回の改正では十分な検討時間が確保できなかったが、次の改正までには関係省庁を交えて検討する必要があると思う。

また市田委員は、伊藤哲夫環境省自然環境局長の通り一遍の答弁に対し、概略以下のように指摘されました。

 世界的には国際基準、指針等に基づいて行われているのだから、日本としてもきちんとしたルールを定めて推進していく仕組みが必要。

 

 水野議員、市田議員には、当会他4団体による質疑の要請に応えていだき、心より感謝申し上げます。